なぜ、赤土等の流出が起こるのか
赤土等とは?
一般に南西諸島でみられる、赤茶色の土(国頭マージ、島尻マージなど)や灰色の土(ジャーガルとその母石のクチャ)など、粒子の細かい土壌をまとめて赤土等と呼んでいます。この赤土等の流出が海や川、地下水を濁らせ、周辺の環境に影響を与えています。
※水に入れると細かな土壌粒子が水に溶け、写真のように水を濁らせます。
国頭マージは、沖縄県の分布面積の約56%を占め粒子が細かく、粘着力が弱くて崩れやすいため、浸食されやすい土壌です。
また、島尻マージやジャーガルなどの土壌や脆く崩れやすい岩石のクチャ(泥岩)なども、赤土等の発生源となります。
沖縄県の土壌分布図
沖縄農業研究センター 土壌環境班 HP より抜粋
赤土等流出のしくみ
内閣府 政策統括官(沖縄政策担当)HPより抜粋
赤土等の流出は、雨が降り、土壌が浸食されることによって始まります。
侵食された赤土等は、雨水とともに河川に流れ込み、さらに、河川を流下して海に流入して拡散します。
海を濁らせた赤土等は、時間がたつと海底に沈み、堆積しますが、潮の干満や波浪によって巻き上げられ、ふたたび海を濁らせてしまいます。
赤土等流出の要因はいくつかありますが、沖縄の気候や地形、土壌の性質などがあげられます。これらの要因に農業や民間・公共の開発事業による土地の改変行為など、人の行為による要因が加わることによって赤土等が流出します。
2009/3 沖縄県文化環境部 環境保全課 沖縄県の赤土流出について 赤土等ガイドブックより抜粋
赤土等による影響
沖縄県は多くの島々からなりその周囲を取り巻く浅い海には、美しいさんご礁が発達し、豊かなさんご礁生態系が成り立っています。また、さんご礁だけでなく、干潟や藻場が広がり、海岸には砂浜やマングローブが見られるなど、豊かな自然環境が広がっています。
これらの環境は、優れた景勝地や自然との触れ合いの場にもなっています。
さんご礁に流出した赤土等が堆積するとさんごが光合成ができにくくなり、生きているさんごが減少、小動物が隠れ棲む枝状のミドリイシ類などの代表的なさんご等がなくなると、魚たちも姿を消してしまいます。
また、海域への赤土等の流入によって美しい海や、砂浜などが赤く染まり景観が悪化して、ダイビングなどのマリンスポーツを含めた観光レクリエーションへの影響が見られます。漁業・水産業では、濁りによるもずくの収穫の減少や定置網への赤土等の付着などの被害がみられ、水道水源地では、濁りによる水質の悪化が懸念されます。
ミドリイシ類の繁茂する海域 |
さんご礁に生息する魚たち |
畑などから出た赤土等の流出で荒廃した海底 |
赤土等で汚れた海草 |
2009/3 沖縄県文化環境部 環境保全課 沖縄県の赤土流出について 赤土等ガイドブックより抜粋
農地における防止対策の事例
農地では、土地を耕す時期や農作物の収穫後に土壌がむき出しになるため、そこから赤土等の流出が発生します。そのため、継続的な防止対策の実施が必要になります。
濁水の発生の抑制‐濁水が発生する状況をできるだけ少なくする対策
マルチング
刈ったキビの葉などを畑の裸地部に敷き詰めて赤土等の流出を防止する。
畑の傾斜修正
畑の傾斜を緩やかにすることで水の流れを弱め、赤土等の流出を防止する。
グリーンベルト
畑の傾斜を緩やかにすることで水の流れを弱め、赤土等の流出を防止する。
沈砂池
畑から流れ出た濁水を一箇所(沈砂池)に集め、赤土を池の底に沈めて(沈殿)から排水する。
緑肥(畑面植生)
農作物を植えない時期の畑地(休耕地)にクロタラリアやひまわり等の植物を植えて畑の裸地化を防ぐ。
排水路
畑周辺からの水を畑に入れないための水路及び畑からの濁水を集めるための水路を設置する。
畦畔
畑地と畑地の間にサトウキビの葉などをまとめたものを並べて置き、赤土等の流出を防止する。